財産分与として退職金と企業年金の一部をもらう約束
2年程前に離婚した優子さん(仮名)からのご依頼でした。離婚したご主人と、やっと退職金と企業年金の分け方を合意したので、公正証書を作りたい、というお話でした。
【 ご依頼の事案 】
優子さんは、2年程前に離婚しています。優子さん・ご主人とも再婚で、10年に満たない婚姻期間でした。
お二人の間にお子さんはいませんから、離婚に際して問題となったのは財産分与です。そして、二人で話し合って、財産分与の多くも処理が終わっていました。
唯一残っていたのが、7年以上先にご主人が会社を退職する際の退職金と企業年金の財産分与です。しかし、これも、2年近くの話し合いを経て、「ご主人の退職金・企業年金の20%を、会社を退職して1年以内に、優子さんに財産分与する。」という合意が出来ました。
そこで、優子さんから、「この退職金・企業年金の財産分与について公正証書を作っておきたい。」というご依頼があったのです。
優子さんは、長い期間を掛けて、苦労の末に、ご主人の退職金・企業年金の17%を財産分与としてもらう約束を勝ち取ったのでした。「執念の財産分与」だと思います。
苦労の末の財産分与ですから、「約束の証拠を残しておきたい、契約書を作っておきたい。」とお考えになるのは、当然ですね。
では、「ご主人の退職金・企業年金の20%を、会社を退職して1年以内に、優子さんに財産分与する。」という合意を公正証書にしたときには、どのような問題があるのでしょうか?
「公正証書を作っておきたい。」と考える大きな理由は、金銭の支払いを内容とする約束について公正証書を作成し、金銭の支払いが滞ったときには、公正証書によって強制執行ができるという点にあります。つまり、公正証書を根拠にして、裁判所の力で強制的に金銭の支払いをさせることができるという点にあります。
ところで、公正証書によって強制執行できるためには、例えば、「○月末までに300万円支払う」などのように、公正証書上で支払う金額が決まっている必要があります。
そうでなければ、裁判所としては、いくら強制執行すれば良いのか分からないからです。
この点、「ご主人の退職金・企業年金の20%を、優子さんに財産分与する。」という約束では、公正証書上では支払う金額が決まっていません。従って、公正証書を作っても、この公正証書では強制執行が出来ないことになります。これが、今回の公正証書の問題点です。
優子さんは、強制執行ができないという問題点を理解した上で、「退職金・企業年金の20%が支払われるまでに、7年以上あるため、きちんとした契約書を作っておきたい。そのために、公正証書にしたい。」と希望されました。
優子さんは、「実際に支払いがされるまでは長い期間があり、それまでに、主人が再婚するかも知れない。そういうことで、財産分与の約束がうやむやにされないようにしておきたい。」を考えたのです。
確かに、公正証書の1番のメリットは、金銭の支払いが滞ったときには、公正証書で強制執行ができる点にあります。しかし、公正証書という公文書で契約書を作っておけば、契約があったこと・契約内容の証明力は強く、事実上、後になってから争うことは困難です。
優子さんは、この公正証書の証明力の強さを利用して、相手に契約を守らせ、自分の利益を守ろうと考えたのです。優子さんとご主人の合意内容からすると、納得できるお考えだと思います。
優子さんは、将来、契約が守られるように、確かな証拠を公正証書で作ったのです。
【補足】
将来の退職金・企業年金の財産分与でも、ご夫婦が、その概算を出して、それに基づいて、一定額の支払いを合意できれば(例えば、500万円の支払い。)、強制執行の根拠となる公正証書を作ることができます。
ただ、この場合、合意した額よりも、実際の額が多くても、合意した額の支払いしか請求できず、逆に、実際の額が少なくても、合意した額を支払う必要があるというリスクがあります。
このようなリスクのために、将来の退職金・企業年金を財産分与する場合には、一定の額を決めることは難しいのです。
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