公正証書ができるまで(3) 公正証書の原案の作成
このように、私が吉澤さん(仮名)からお話を聞きながら、公正証書の原案を作ります。吉澤さんの場合、原案の主な内容としては、
(1)養育費
(2)面接交渉(面会交流)
(3)財産分与
(4)清算条項
(5)強制執行の認諾など、となりました。
原案を作っていく過程では、どのような表現とするか迷うこともあります。そのような場合には、A案・B案という違った表現のものをお作りして、吉澤さんに選んでいただくこともありました。パソコンでA案・B案を作り、メールに添付して送り、吉澤さんに選んでいただくのです。どのような表現が、気持ちを良く表しているかも重要だと思います。
それぞれのご夫婦の今までの生活・各人のお考え等により、公正証書には様々な内容が記載されることがあります。吉澤さんの場合も、吉澤さん・ご主人のお考えにより決められた内容が、上記の他にいくつかありました。
離婚協議書の雛形のようなものを見ると、こう作らなければいけないという印象を受けますが、内容にしても、形式にしても、かなり自由に作れます(限度はありますが)。
(立川市にある立川公証役場の外観です。立川市は多摩地区の中心都市で、交通の便も良いですね。そのためか、立川公証役場は大変忙しそうでした。)
ここまでは、ご主人のお考えについても、吉澤さんからお聞きしながら公正証書の原案を作ってきましたが、ご主人にも、原案を見ていただく必要があります。原案の内容で良いのか、訂正する部分はあるか、などを吉澤さん・ご主人で話し合っていただくのです。
ちょうど2週間後に、ご主人が出張で東京に出ていらっしゃるそうで、その機会に話し合っていただくこととなりました。
今まで、ご夫婦の間で離婚について話し合いがされてきても、その内容が書面にされて、約束(法律的には契約です)が具体的に文章にされると、そこから受ける印象は、かなり違ったものになることがあります。
「こういう風になるんだろうな。」とアッサリ受け止められる方もいれば、「ここまでしなければ、俺を信用できないのか。」とぶ然とする方などなど・・・です。
吉澤さんの場合は、どちらかと言えば後者のケースでした。
ご主人の沈黙、ご主人からの鋭い視線・・・その後で、ご主人も原案の内容に同意されました。
ご主人が公正証書の原案をご覧になられた後で、私からも、ご主人にお電話をいたしました。公正証書のご説明のためです。
公正証書は、日常生活では馴染みのないものだと思いますが、裁判をしなくても強制執行が可能であるという点で、便利なものです(相手側からすると厄介なものですが)。
ただ、裁判と違って、公正証書には限界があります。
裁判であれば、金銭の支払いだけではなく、例えば不動産の登記を変更するのであっても強制執行ができます。
しかし、公正証書による強制執行は、実際上、金銭の支払いに限られます(法律上は、それ以外にも強制執行が可能な場合もありますが、実際上意味があるのは金銭の支払いです。)
吉澤さんの場合、養育費の支払いがありますし、財産分与も金銭の支払いでしたから、公正証書による強制執行が可能でした。
そこで、吉澤さんのご主人には、定められた金銭の支払いをしない場合には強制執行に服しますという「強制執行の認諾文言」の入った公正証書を作成した場合には、給料が差押えられる等の不利益を受ける可能性がありますというご説明をしました。ご主人も、公正証書については調べられたそうで、「理解しています。」というご返事でした。
この物語については、複数のご依頼から学んだことを参考にしましたが、フィクションであることを、改めて、お断りしておきます。また、吉澤さんというお名前も、物語に具体性を持たせるために使用しており、実在する方々とは、無関係であることも、お断りしておきます。
ページ名 「公正証書ができるまで(3)・・・公正証書の原案の作成 離婚後の安心をサポートさせていただきます」
文責 行政書士による協議離婚サポート・東京運営 東京都杉並区 行政書士 瓜生和彦
落ち込んだり泣いたりと、離婚は感情が変化すると
思いますので、なんでもご相談くださいませ。
よくある質問 相談について
離婚、公正証書についてよくある質問についてご紹介いたします。
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離婚するので、公正証書で年金分割をしたいと思っていますが、年金分割には、「3号分割」と「合意分割」の2種類があるようですね。 良く分からないので、ザックリと説明してください。 |
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「年金分割」とは、婚姻期間中の厚生年金・共済年金の加入実績を、離婚するご夫婦が分け合うことです。これにより、ご夫婦の年金額が調整されます。 この年金分割には、①「3号分割」と②「合意分割」があります。簡単に言うと、2008年4月以降の厚生年金・共済年金の加入実績を対象とするのが「3号分割」で、2008年3月以前を対象とするのが「合意分割」です。 「3号分割」は、会社員の夫に扶養される専業主婦など、国民年金の「第3号被保険者」だった方が対象となります。この方は、年金事務所で手続きをすれば、2008年4月から離婚した月の前月までの厚生年金・共済年金の加入実績のうち、対象となる夫の厚生年金・共済年金の加入実績の「2分の1」の分割を受けることができます。「3号分割」では、ご夫婦で年金分割の合意をすることは不要です。 以上に対して、「合意分割」は、2008年3月以前の厚生年金・共済年金の加入実績を対象とするもので、ご夫婦で協議して分割の割合を決めて年金分割をします。分割の割合については、実務では、通常、厚生年金の加入実績を半分(0.5)ずつにすることが多いと思います。 |
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離婚するのですが、財産分与として金銭の支払いがあります。 このような場合も、公正証書を作るべきでしょうか? |
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公正証書は、支払金額と支払期限が決まっている約束をしたにも拘わらず、金銭の支払いが滞ったときに、強制執行の根拠になります。支払を強制できるという点で、ここに公正証書を利用するメリットがあるのです。 そうすると、財産分与としての金銭の支払いが、離婚前に済むのであれば、支払が滞ることはありませんから、公正証書を作成する必要はありませんね。 他方、財産分与としての金銭の支払いが、離婚後となるのであれば(一括払いでも、分割払いでも)、支払が滞るおそれがありますから、公正証書を作成しておく必要があります。 |
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離婚で公正証書を作って、不動産の財産分与についての約束もしようと思います。公正証書の作成のサポートだけではなく、不動産の登記について、司法書士さんのご紹介などをお願いすることもできますか? |
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司法書士さんのご紹介についても、よくご質問があり、ご希望であれば、ご紹介をしております。 具体的に言うと、お付き合いのある司法書士さんに、事案の内容をご説明し、見積をいただき、登記に必要な書類を取り次ぎ、依頼者を司法書士さんに引き合わせる等のお手伝いをしております。また、公正証書の作成と登記の申請では、必要な書類が少し異なりますから、必要であれば、書類を代理人として取得することもいたします。 司法書士さんをご存知ない方がほとんどですから、司法書士さんを探し、見積をもらい、依頼する司法書士さんを決めるのは、少し面倒かも知れません。その辺のサポートもしておりますので、あまりご負担を掛けずに登記も済ませることができると思います。 |
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