公正証書ができるまで(4) いよいよ公証役場へ
公正証書の原案が完成すると、いよいよ公証役場へ行って、公証人に公正証書の作成を依頼します(公正証書の作成の嘱託と言います)。
公正証書に押印する時には、吉澤さん(仮名)、ご主人の代理人として私の2人が公証役場へ行きますが、公証人との打ち合わせの段階では、私1人が行きます。
吉澤さんは埼玉県にお住まいで、私は東京都ですから、交通の便を考えて、都内でも埼玉県に近い公証役場を選びました。
どこの公証役場へ行くかについて、一言。
埼玉県にお住まいであっても、公正証書は埼玉県内の公証役場で作らなければならないというものではありません。こちらから行くのであれば、ご自宅あるいは勤め先等、利用しやすい公証役場で構いません。私は、どちらかと言うと、都心から少し離れた公証役場が好きですね。あまり混んでいないように感じ、利用しやすいと思います。
はじめに公証役場に行くときに、私が持参したのは、(1)吉澤さんとご主人の合意内容、(2)3人分(吉澤さん、ご主人、私)の印鑑証明書、(3)戸籍謄本です。
戸籍謄本については、ご夫婦であること、お子さんの存在を確認するために要求されます。
(府中公証役場の入り口です。京王線府中駅から徒歩4~5分程度の交通の便の良い公証役場です。藤和ハウスが1階にあるビルにありますから、藤和ハウスを目印にすると分かりやすいです。)
また、はじめに公証役場に行くときには、予約をして行きます。公証人はお忙しいですし、公正証書を作成するための出張もありますから、常に公証人がいらっしゃるとは限りませんから。
はじめての公証人だと、緊張する瞬間です。名刺交換をして、吉澤さんとご主人の合意内容を公証人に渡し見ていただきます。
* 新型コロナの感染が始まってからは、どの公証役場も、接触の機会を減らしています。公正証書の作成をお願いするのであっても、戸籍謄本などの資料はメールに添付してお送りし、必要があれば電話での打ち合わせとなっています。
公証人によっては、「この部分はこんなケースもあるから、もう少し考えてみても良いよね。」等のお話をしてくださることもあります。そうしなさい、ということではありません。単なるアドバイスです。色々な経験に基づいてのお話ですから、勉強になります。そのような、アドバイスも考慮して、原案を再検討して、当事者の方々にも、私から再提示したこともありました。
吉澤さんの場合には、お子さんとの面接交渉の内容で、公証人は少し考え込んでしまいました。
これは、離婚の公正証書を代理人で作成する場合の注意点と関係しますから、代理人で作成する場合の注意点をお話しましょう。
例えば、離婚の合意・子供の親権者をどちらにするか、という問題は、ご夫婦の意思が重要ですから、これはご夫婦お2人で決めていただく必要があり、代理人の形で書面を残すことは適当ではないでしょう。代理に親しまないと言えるものです。
でも、この2つは公正証書に記載する必要は必ずしもありません。離婚の合意は、離婚届の作成で明確になりますし、親権者についても離婚届に記載する必要があるからです。
吉澤さんの場合、お子さんの親権者は吉澤さんであり、吉澤さんが育てていくということでした。そうすると、ご主人とお子さんとの面接交渉について、決めておく必要がありました。ご主人とお子さんとの面接交渉は、親子関係そのものにも係わってしまうため、やはりご夫婦の意思が重要となります。この問題もあまり代理の形では書面に残しにくいのです。
では、面接交渉について、代理の形で公正証書を作れないのでしょうか?
そんなこともありません。面接交渉について、個別・具体的に定めることは無理ですが、抽象的にならば定めることができます。ただ、あまり抽象的なものになっては、何も決めていないのと変わらないことになります。そこで、ご夫婦の意思をなるべく取り入れながら、かつ、多少、抽象的に作るのです。
「この程度の面接交渉ならば、公正証書に記載しておいても良いかな。」と、公証人に言ってもらえるようにするということです。
吉澤さんの合意内容についても、公証人は、公証役場にある資料を検討した後で、「この程度の内容ならば、公正証書に入れましょう。」と言ってくださいました。
公正証書には、13行に亘って、面接交渉についての取り決めがされました。今読んでも、抽象的ではあるけれど、結構、決められているよな、という印象を受けます。
また、今回は、私がご主人の代理人として公正証書を作成しますから、ご主人から私への委任状が必要になります。委任状における委任事項の記載の仕方については、それぞれの公証人によって違いがあるときもあるそうです。元公証人だった方からお聞きしたことがあります。
私は、合意内容を要約せずに、全文をそのまま委任事項として記載して委任状を作成しています。今回も、その様な内容の委任状を、公証人に見ていただいておきました。
このようにして、公証人に公正証書の作成を依頼します。
この物語については、複数のご依頼から学んだことを参考にしましたが、フィクションであることを、改めて、お断りしておきます。また、吉澤さんというお名前も、物語に具体性を持たせるために使用しており、実在する方々とは、無関係であることも、お断りしておきます。
ページ名 「公正証書ができるまで(4)・・・いよいよ公証役場へ 離婚後の安心をサポートさせていただきます」
文責 行政書士による協議離婚サポート・東京運営 東京都杉並区 行政書士 瓜生和彦
落ち込んだり泣いたりと、離婚は感情が変化すると
思いますので、なんでもご相談くださいませ。
よくある質問 相談について
離婚、公正証書についてよくある質問についてご紹介いたします。
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離婚するので、公正証書で年金分割をしたいと思っていますが、年金分割には、「3号分割」と「合意分割」の2種類があるようですね。 良く分からないので、ザックリと説明してください。 |
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「年金分割」とは、婚姻期間中の厚生年金・共済年金の加入実績を、離婚するご夫婦が分け合うことです。これにより、ご夫婦の年金額が調整されます。 この年金分割には、①「3号分割」と②「合意分割」があります。簡単に言うと、2008年4月以降の厚生年金・共済年金の加入実績を対象とするのが「3号分割」で、2008年3月以前を対象とするのが「合意分割」です。 「3号分割」は、会社員の夫に扶養される専業主婦など、国民年金の「第3号被保険者」だった方が対象となります。この方は、年金事務所で手続きをすれば、2008年4月から離婚した月の前月までの厚生年金・共済年金の加入実績のうち、対象となる夫の厚生年金・共済年金の加入実績の「2分の1」の分割を受けることができます。「3号分割」では、ご夫婦で年金分割の合意をすることは不要です。 以上に対して、「合意分割」は、2008年3月以前の厚生年金・共済年金の加入実績を対象とするもので、ご夫婦で協議して分割の割合を決めて年金分割をします。分割の割合については、実務では、通常、厚生年金の加入実績を半分(0.5)ずつにすることが多いと思います。 |
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年金分割のうちの「合意分割」を公正証書でしようと思います。 「合意分割」を公正証書でするメリットは何でしょうか? |
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年金分割のうちの「合意分割」は、ご夫婦で分割の割合を決めてする年金分割ですが(2008年3月以前の厚生年金・共済年金が対象)、その方法としては、離婚後にご夫婦が揃って年金事務所へ行って手続きをする方法、公正証書(協議離婚の場合)や調停証書(家庭裁判所での離婚調停の場合)などで分割の割合を定める方法等があります。 このうち公正証書の場合には(調停証書も同じですが)、離婚後に年金を分割してもらう方(ほとんどは奥さんですね。)が、公正証書を使って、年金事務所でお1人で手続きが出来ることが大きなメリットです。 年金分割の手続きは離婚後にしますが、離婚したご夫婦が離婚後に一緒に年金事務所へ行くというのは、お仕事の忙しいご主人にとっては大きな負担になりますし、顔も合わせたくないご夫婦もいらっしゃいますから。 |
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離婚の公正証書を作った時には、「送達」をしておいた方がいいのでしょうか? |
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公正証書で強制執行するためには、強制執行を開始する前に、公正証書の謄本(コピー)を債務者(養育費や慰謝料を支払う方)へ送る必要があります(これを、「送達」と言い、公証人が送ります)。「この約束を忘れていませんか?」と通知するためで、最後通牒のようなものです。
ただ、公正証書の場合には、特殊な対応が認められています。つまり、公正証書を作る時に、債務者が公証役場に来るのであれば、その場で、債務者へ謄本を渡して、受取を作ることで、この送達を終わらせることができます。これを、「交付送達(または、公証人送達)」と言います。 公証役場の実務では、交付送達が行われのが、通常だと思います。特に、離婚で、養育費の支払いが約束される場合には、養育費の支払い期間が長くなり、債務者の住所などが分からなくなる恐れもありますから、公正証書を作った時に、「交付送達」をしておくことをお勧めします。 |
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